「フルーツ宅配便」に心が揺さぶられる

2017年8月7日

未分類

「フルーツ宅配便」に心が揺さぶられる はコメントを受け付けていません。


「フルーツ宅配便」は『ビッグコミックオリジナル』に連載されている漫画です。単行本はまだ第2巻まで発売されているだけの、比較的新しく登場した漫画ですし、作者の鈴木良雄さんも他に単行本は出ていないようなので、新人に近い漫画家さんなんだろうと思います。

舞台はある地方都市で、主人公はサラリーマンを辞め、故郷の都市にUターンしてきた青年サキタです。就職先の見つからない彼は、デリヘル店の店長見習いになり働いています。本当は怖い人の面もあるかも知れないけど、喧嘩が強くて、一本筋の通った生き方をしているオーナーのミスジさんと、少し天然な送迎ドライバーのマサカネ君、そして様々なデリヘル嬢とそのお客が登場してきます。

シンプルで少しホノボノとした絵柄、出てくるデリヘル嬢たちもなんとも凡庸な佇まいで登場し、リアリティを感じさせてくれる。風俗を題材にしながら、過剰にエロい表現はなく、性を介在させた人の営みがさりげなくと描かれ、自然と作品に引き込まれていきます。

デリヘルて利用したこともないのだけれど、日常のすぐそこにある風俗の世界の小さな出来事に、ああこんな世界なんだなとリアルさを感じさせられます。デリヘル嬢たちは主婦の副業だったり、他に仕事のしようもない若い女性だったり、それなりに幸福な人も、DVなどに苦しむ不幸な人もいます。
お客側も同じように様々で、彼らの出会いや別れがビビッドに描かれています。サキタもまたデリヘル店長見習いという仕事に後ろめたさもあり、昔の友だちに会った時には、仕事のことは言えなかったりするのです。それでもミスジさんに支えられ、デリヘル嬢たちに真摯に向かいあうことで、仕事のやりがいを感じたりしているところもあります。

デリヘルとい裏の世界を垣間見ることの好奇心も面白さにあるが、それ以上に登場してくる人々の好悪両面のリアリティが心を満たしてくれる傑作、良心作です。