『天離る月星』 藤原不比等と五百重の愛

2018年4月16日

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長岡良子作。8世紀律令体制を整えた立役者藤原史(不比等)。
彼は『大化の改新』の中臣鎌足の息子です。これは、その子供時代の物語です。
当時の名は真人。母は既になく父鎌足も政治で多忙で家になく、彼はいつもひとりでした。
唐より帰ってきた定恵異母兄もすぐに死んでしまい、孤独な日々を送っています。
667年天智天皇が飛鳥から近江に都を移したのを機に鎌足の正妻の家で暮らすようになります。
そこには異母妹の五百重がいました。元気でやんちゃな彼女は彼の警戒心を解いていき、互いに至福の時を過ごします。
が、真人の血筋、才能を見抜いている田辺大隅らの力により『政治』関わっていくよう仕向けられます。
11歳、鎌足の死とともに五百重と離れて田辺大隅邸で暮らさなければならなくなり、別れがたい幼い二人で駆け落ちするもすぐに捕まってしまいます。
田辺邸では五百重に会うことだけを心の支えに勉学に励みますが、否応なく政治の権謀術数の世界へ入っていきます。
18歳の時やっと15歳の、美しくなった五百重と再会します。つかの間の幸福。
しかし天武帝に見初められた彼女は入内することに。五百重は拒否するのですが、『史が政界へ進出する助けにもなる』と説得され受け入れます。
入内間際、二人で逃げ心中しようとするのですが、史にはどうしても五百重を殺すことができません。
彼女は言います。「強くなって そして五百重を取り戻してください」「それまでは五百重が兄上様を守ってさしあげる」史は彼女を抱きしめます。「待っていてくれ 必ず必ず おまえを取り戻す… !!」 この物語は実話が元になっています。
史(不比等)が大人になり、持統朝下相当な力を持つようになって、五百重を取り戻した時、「先帝の妃と密通していた」と大スキャンダルだったようです。
この作者は古代日本を舞台にいくつもの愛のカタチを描いていますが、これはその「少年期の純粋な愛」のカタチと言えますか。
ただただ哀しく美しいです。